ドラフトとトレードと人的補償を語れ

アマチュア予想屋の斜め上語り

【中日】若手に短し、ベテランに長し

 プロ野球の選手の一生は、主に若手・中堅・ベテランの3つにわかれる。

 ほとんどの選手は中堅期にピークを迎えるため、中堅に差し掛かる頃に一軍に定着できていないとクビが寒くなってくるわけだが、中日ドラゴンズという球団には不思議な悪習がある。それは、


 「野手は、30までは若手」


 である。

 かつての監督・落合博満氏の発想が定着したのか、それとも球団的な体質なのかはわからない。だが事実として、中日には"一軍半"の中堅どころが数多くいる。


●捕手

  桂依央利、木下拓哉、加藤匠馬


●内野手

  石川駿、石岡諒太、三ツ俣大樹、溝脇隼人


●外野手

  井領雅貴、遠藤一星、渡辺勝、武田健吾


 ここに書いた面々は皆、25歳から35歳までのアラサーの世代である。もちろん人によって貢献度は違うが、誰一人レギュラーとは呼べない。彼らは皆、平田良介や大島洋平の足元にも及ばず、京田陽太や高橋周平に追い抜かれ、そして今や、根尾昴や石川昴弥にとっての低い壁になることを生業にしている。


 はっきり言おう。

 こういう存在が一番害悪である。


 「彼らがいないと二軍が回らない」という意見もあるだろう。だが野手に関して、二軍を回すのは、これからの若手と、落ち目のベテランでいい。往年の名選手の取り組みを肌で感じることは若手のためになるだろうし、コーチ的な役割をこなすことはベテランのセカンドキャリアの予習になるだろう。ヘラヘラしている中堅は、短期的にも長期的にも何の役にも立たない。


 また、「阿部寿樹のように覚醒する選手が出てくるかも知れない」という意見もあるかと思う。確かに阿部は、一昨年までは使えない中堅のひとりだった。ただ考えてほしい。阿部のような"アタリくじ"があることに期待して、大量に中堅を抱えておくことは、球団にとって果たして得だろうか? 1回の成功に味をしめて、ガチャの期待値を見誤っては、いたずらに金が溶けていくばかりである。


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 弱いチームほど、呪文のように「若返り」と口にする。しかしそれは、ベテランをクビにして中堅を守り、見かけの平均年齢を下げることでは断じてない。むしろいらない中堅を積極的に整理して、若手の出場機会を確保することが、明日のチームのためになるはずであると──、


 ──なに、どうしても人が足りない?


 そんな時は、他球団がクビにした中堅を拾えばいい。彼らは安上がりで、文句も言わず、身を粉にして球団に尽くしてくれるだろう。そして年末、用が済んだらクビを切ればいい。

 ぬるま湯の正社員より、やる気のある派遣社員の方が都合が良いのは、皆様も覚えがあるだろう。人材管理とは、非情だがそういうことである。

【巨人】一塁だれが守る問題

 阿部慎之助の引退は、2019年のジャイアンツにとって一番のビッグニュースだった。スーパースターがいなくなるという寂寞感以上に、OPS9割の打者がいなくなるという戦力的な損失が大きい。

 穴埋めとして、球団は新外国人のジェラルド・パーラを獲得した。左打ちの外野手で、昨年メジャーで119試合に出場した大物だ。ただ彼はポジション的にゲレーロの代役であって、一塁手兼代打の切り札だった阿部の役割を求めるのは筋違いである。


 そもそも、来年の一塁手は誰になるのだろう?

 この問題は意外にも深刻である。何故なら93年組が争う二塁と違い、候補すらいないからだ。


 19年シーズン、主に一塁を守ったのは岡本和真と大城卓三である。しかし首脳陣は岡本を三塁手、大城を捕手として育成する方針を打ち出している。来シーズン全く守らないということはないだろうが、一塁手としての出場機会は大きく減るだろう。

 他の候補としてはベテランの中島裕之、若手の北村拓巳・山下航汰らが挙げられるが、いずれも一軍戦力として計算するのは難しい。新外国人を取る噂もあるが、戦力バランス的には投手3:野手1でいきたいところなので、年間を通じた出場は見込めない。


 ではどうするのか。

 一番手堅いのは亀井善行の一塁コンバートである。去年10年振りに規定打席到達を果たした亀井だが、前回(2009年)は主に一塁手として出場していた。原監督はパーラを右翼で使うそうなので、押し出された亀井が一塁に入るのは自然な流れだ。

 しかし亀井は外野守備の名手。消去法的に一塁で使うのは勿体なさが残る。

 となると、最後の手段はトレードである。


 オススメは阪神・陽川尚将である。一塁・三塁が本職の選手だが、来年の阪神は大山悠輔を二塁に回す案が出ているほどで、陽川にとってはかなり厳しい環境と言える。しかし巨人であれば、たとえば左投手相手の時だけ一塁スタメンで出るなど、亀井との共存も図れる。陽川にとっても悪い話ではないはずだ。

 交換相手は吉川大機でどうだろう。12球団ワーストの失策数を記録した阪神にとって、特にショートは急所中の急所。代走からそのまま守備固めに入れる吉川がベンチにいれば、攻撃も守備も幅が広がるに違いない。


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 一塁手は外国人選手が務めるものという風潮は根強いが、だからこそ、そこを日本人で賄えるチームは強い。事実、パ・リーグはオリックスを除く5球団で日本人レギュラーがいるが、セ・リーグではヤクルト村上ぐらいしかいない。

 DH導入以前に、まずそういった問題に目を向けてみてはどうだろうか。



●対右投手     ●対左投手


 (左)△重信慎之介  (二)□若林晃弘

 (遊) 坂本勇人   (遊) 坂本勇人

 (中)△丸 佳浩   (中)△丸 佳浩

 (三) 岡本和真   (三) 岡本和真

 (右)△パーラ    (右)△パーラ

 (一)△亀井善行   (左) 石川慎吾

 (捕)△大城卓三   (一) 陽川尚将

 (二)△田中俊太   (捕) 炭谷銀仁朗

 (投) ーーーー   (投) ーーーー

【オリックス】非力俊足コレクションは捨てよう

 オリックスという球団は、編成が下手である。


 大枚叩いて獲得したベテランが働かないのは日常茶飯事だが、それ以上に選手の偏りが激しい。

 その最たる例が『非力俊足コレクション』である。


 たとえば外野手。中堅層の小田裕也と後藤駿太はいずれも右投左打で、絵に描いたような非力俊足タイプ。どちらも充分に一軍の戦力ではあるが、レギュラー定着には至っていない。

 そうこうしているうちに、若手で同タイプの西浦颯大が今年頭角を表してきた。代走や守備固めならすでに一級品だが、彼もまたレギュラーとは呼ぶ水準にはない。

 さらにここに、投手から転向した佐野皓大・根本薫、内野から転向した宗佑磨が並ぶ。全員足に自信があるタイプで、佐野と宗は一軍でもそれなりに活躍したが、まだレギュラーと呼ぶ水準には……


 はっきり言おう。こんなにいらない。

 特に小田と後藤は「盗塁が下手」「左投手に弱い」という特徴まで同じである。準レギュラーというのは、互いの一長一短を補うために併用するのであって、この2人を併用しても何も生まれない。ただ似たような選手がシフト勤務しているだけである。


 というわけで、早速トレードしよう。

 小田と後藤、どちらを放出してもいい。本当にどちらでもいい。ただトレード先の球団は決まっている。

 埼玉西武ライオンズである。


 秋山翔吾のメジャー移籍に伴い、球団は金子侑司のセンターコンバートを予定しているそうだが、短期間で順応できるとは限らない。また若手外野手の有望株は多いものの、ほとんどが打撃型。ここは中堅クラスの守備ウマ選手を獲得して、色々保険をかけておきたいところだ。

 トレード相手だが野田省吾はどうだろう。救援左腕として昨季23試合に投げたが、現状では小川龍也・佐野泰雄に次ぐ3番手。小田も後藤も準レギュラー格であることを考えると、良い落とし所ではないだろうか。


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 さて、ここまで長々と書いたが、実は内野手もまったく同じ──いや、内野の方がひどいと言っていい状況である。

 20代後半から30代前半にかけて、安達了一、白崎浩之、西野真弘、福田周平、大城滉二、小島脩平、山足達也と似たようなタイプが大量にいる。しかも規定打席に到達したのは福田ただ1人。働き盛りの世代がこれでは、上位進出は難しい限りだ。


 さあ、すぐに売ろう。

 オススメは横浜DeNAベイスターズだ。ラミレス監督はソトの一塁コンバート案を明かしており、ただでさえ手薄な二遊間は余計に手薄になる。例えば山足達也など、足が早くてそれなりのユーティリティ性を持っているので、ベンチに置いておく分には重宝するはずだ。


 ややアクロバティックな手としては、山足にもう1人つけて、ロペスの獲得を目指すというのもアリだろう。これはロドリゲスとモヤが両方とも不振に陥った場合の緊急策ではあるが、DeNA球団はロペスを絶対的レギュラーとは位置付けていないようなので、けして非現実的な話ではない。


 放出するもう1人だが──個人的には安達了一はどうかと思っている。

 パ・リーグ隠れNo.1遊撃手と呼ばれて久しい安達だが、32歳という年齢に加えて今年は怪我もあった。大城や、さらにその下の太田椋がいる以上、現状どうしても必要な存在とは呼びがたい。DeNAであれば正遊撃手として、二塁に回った大和と鉄壁の布陣を組むことも可能であろう。山足もそうだが、「君が必要だ」「君がいて良かった」という環境で働くことが、選手にとっては何よりの幸せのはずだ。


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 今年のドラフト、石川昴弥に入札したのは、個人的にはとても意外だった。チーム状況!を考えればベストな手だと思うが、長年それをしてこなかったのがオリックスという球団である。福良GMを筆頭に、チームを変えようという意思を感じる。

 だからこそ、是非積極的なトレードをお願いしたい。二軍は育成の場であり、『5年後の一軍』をシミュレーションする場だ。上がり目のない中堅に打席数を与えても何の意味もないし、飼い殺しは選手のためにもならない。このマインドを改めてこそ、新生オリックス誕生の瞬間と言えるだろう。



●オリックス


 (中)△宗 佑磨

 (二)△福田周平

 (左) ジョーンズ

 (指)△吉田正尚

 (一) ロペス

 (三) 中川圭太

 (遊) 大城滉二

 (右)△西浦颯大

 (捕) 若月健矢


●横浜DeNA     ●埼玉西武


 (中)△神里和毅   (中)□金子侑司

 (左)△佐野恵太   (遊)△源田壮亮

 (一) ソト     (二) 外崎修汰

 (右) オースティン (一) 山川穂高

 (三) 宮崎敏郎   (捕)△森 友哉

 (二) 大和     (三) 中村剛也

 (捕) 伊藤 光   (左)△スパンジェンバーグ

 (遊) 安達了一   (指) メヒア

 (投) ーーーー   (右)△小田裕也